「きのかの家」たより4
  

 ● 外断熱工法の特徴と効用

 
] 外断熱の特徴

  

 きのかの家は鉄筋コンクリート(RC)造の共同住宅ですが、「外断熱工法」を採用しています。日本の共同住宅の大部分は、コンクリート壁の室内側に断熱材を入れ、さらに内装仕上げを張る「内断熱工法」が普通ですが、逆にヨーロッパの共同住宅では外断熱が普通です。

 数年前に「日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク」という本が出て内断熱が槍玉にあげられて以来、内がいいか外がいいかの大論争が持ち上がりました。

 結論から言えば、両者とも一長一短なのですが、現在の大テーマである温暖化防止(CO2排出削減)の観点からは、断熱性に優れていて建物が長持ちする外断熱が望ましい、と言えるでしょう。
 外断熱の長所は以下のようにいえます。

1.建物を外から包むので日光や寒暖によるコンクリートの熱膨張・収縮が少なくなり、躯体が長持ちする。

2.断熱材を厚くしても室内の面積に影響が無いので、断熱性を高くしやすい。

3.内装はコンクリートのまま(塗装、または塗り材仕上も可)でよく、室内の熱容量が大きいので、常時暖房すれば温度が安定し、燃料代も経済的である。

 一方、外断熱の問題点は以下のようになります。

1.バルコニーが出ていたり、複雑な外形だと断熱工事がむずかしい。

2.断熱材を固定したり、空気層をとって外装を固定したりするのに手間がかかり、サッシ枠も幅広のものが必要で、内断熱に較べてコストが高い。

3.内断熱では外装にタイルが多いが、外断熱ではタイルは重いので使いにくく、外装仕上げが限られる。

 総合的にいえば、外断熱はコストが高いが性能的には優れています。ヨーロッパに多いのは、冬が寒く長いので常時暖房を主としていることと、バルコニーの無いデザインの共同住宅も多く外断熱工事がやりやすいことが理由になっています。従って、日本では北海道では気候も建物形状もそれに近く外断熱工法が適しているといえますが、温暖な関東以南では必ずしもそう言えない面があります。

   

] 大きい熱容量で安定した室内環境

 きのかの家では、コストが高いことを承知で外断熱工法を採用しています。図1にあるように、20cmのコンクリート外壁に12.5cmのロックウール断熱材、3cmの通気層をとって焼き杉の外装材を張っています。バルコニースラブと躯体の間も断熱材で遮断し、ガラスは複層を使用していますので、断熱性が非常に良い建物になっています。

 外断熱を採用した理由は、
@ 建物を100年以上もたせたい
A 高断熱にして冷暖房エネルギーを減らしたい

B 室内の熱容量を大きくして自然エネルギーを活用したい
という3つの理由によります。この中で、Bの「熱容量」はあまり知られていませんが重要な省エネの要素になります。

 きのかの家では、外断熱なので内装を張らずに、コンクリート壁をそのままか、直塗装か直塗り壁にしている家が多いのです。厚いコンクリートが室内に面しているので熱を溜める容量が非常に大きく、暖まりにくいですが一度暖めると冷えにくい(逆も同じ)室内環境ができます。
 冬の夜に暖房をつけて20℃くらいにして過ごし、暖房を切って寝ても、朝は16〜17℃(外部は3〜4℃で)が保たれています。それは、暖められたコンクリートの内部熱の放出が暖房の代わりをしているからです。壁にボードや板を張ってしまうとこの性能を生かせなくなってマイナスです。同様に、木造住宅では内装に蓄熱性がないので暖房すれば暖まりやすいのですが止めてしまうと下がりやすいのです。熱容量の大きい住宅は室温の変化が少なく、健康的で省エネ性に優れているといえます。

  
] パッシブ暖冷房でエアコン無しの生活

 

 この蓄熱量を生かして、私のところでは、パッシ
ブ暖冷房の工夫をしてエアコンなしの生活にチャレ
ンジしています
(パッシブとは、ソーラーパネルや
ポンプを使わないで太陽熱、通風、夜間冷気などを
直接利用する手法のことです)

 
 まず冬は、南のガラス窓からの直射熱を床の蓄熱
タイルと反射板を利用して天井のコンクリートに蓄
熱します(図2、図3)。さらに、南側の部屋の暖
まった空気を「パッシブファンダクト」(図4)で
北側室にも循環させ壁にも蓄熱させます(図5中の
「冬モード」)。
 夜は、壁や床・天井の熱が放出されますので、
晴天の日はほとんど暖房の必要がありません。


  

 夏は、夜になれば外気が室温よりかなり下がって
くるので、その冷気を「パッシブファンダクト」で
室内に導入します(図5中の「夏夜モード」)。
 時間的には夜の10時頃から朝の7時頃まで連続的に導入して、壁天井に蓄冷します。昼間は窓を閉めて熱い外気が入らないようにし、東西の直射日光もシャットアウトすれば、壁が冷えているので室内の温度はあまりあがらず、冷房を使用しないでも過ごせます。
 それでも、真夏の一時期はかなり暑くなりますが、扇風機を適宜使うことで乗り切ってきています。


 
夏のパッシブ冷房の効果を測定したグラフ(図6)を見ると、外気温は昼と夜で大きく変化しているのに室内温度はほとんど変化せず安定していることがわかります。これは、RC造の外断熱で室内の熱容量大きいからできるパッシブ手法なのです。[10.1.31] 
 

 

-5:パッシブファンダクトの夏冬モード。
   夏夜モードは外気を入れて蓄冷、
   冬モードは南側の暖気を循環させる。

 
 
 

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