「きのかの家」たより3 
 

 ● コンポストトイレ

   
 今回は、我家のコンポストトイレ(バイオトイレとも呼ばれます)についてのお話です。

 
 排泄物を自然の力で浄化するには、通常、地中の微生物による分解の働きを利用します。広い土地がある場合は、排泄物を広く土の上に流せば分解され土に戻ります。土地が狭ければ、微生物の処理能力に限界があるので微生物を含む処理槽などをつくる必要があります。簡単なものは、便器の下に木屑やおがくずの入った醗酵槽を用意しそこで大の方は分解します。通常、小の方は別に集めて液肥として使用します。水や電気は一切使用しませんので環境負荷がありません。

 
 しかし、この方法だと処理能力に限界があり、維持管理にも手間がかかるので一般的とはいえません。そこで開発されたのが、ユニット化されたコンポストトイレです。便器とその下にかなり大きなステンレス製の醗酵槽があり、その中にはおがくずを詰めますが、それをかき回す大きなコイル状の攪拌装置が付いています。また、槽の下面に温度を上げるためのヒーターが用意されています。用を足した後ボタンを押すと攪拌装置がまわり、排泄物はおがくずの中にもぐります。大の方は、微生物の力でほぼ24時間で分解されます。小は、ヒーターがおがくずの温度を60℃位に保つので蒸発して排気ファンから排出されます。醗酵槽は、2人用、4人用、6人用など使用人数に応じた大きさのものを使用する必要があります。

 
 このような製品ができたので、別荘ではかなり使われます。また、戸建住宅でも少数ですが使われるようになってきました。いま、これがもっとも活躍しているのは山小屋です。山小屋のトイレによる環境汚染が問題になっているのはご存知と思いますが、最近はその対策として大型のコンポストトイレが多く使われるようになっています。電気が必要なので太陽光発電を組み合わせます。富士山ではすべてこれに代えられたとのことです。冬の間は閉山しており、おがくずも凍っているのですが、春になって暖めると再び微生物が働き始めるのだそうです。

 
 さて、我家のコンポストトイレ(図1)ですが、醗酵槽の高さが60p以上あり床下に納まるかどうかが大きな問題でした。幸い、構造が逆梁工法で床下に60pの空間があり、トイレの床を20cm上げるだけで納まりました。普通の構造のマンションでは無理だったでしょう。便器は昔の汲取り式の時代に使っていた古い型の便器を使い、それに私の希望でウォッシュレットを付けてもらいました。我家は二人暮らしですから2人槽でいいのですが、ウォッシュレットの水分が増えるので4人槽にしてあります。コンポストトイレは微生物という生き物の働きによっていますので、微生物環境が適正でないと機能しないという難しさがあります。排泄物や水分が多すぎても少なすぎても困るのです。
 

 メンテナンスは、当初から半年もするとおがくずが黒っぽく
なってきますので、それがかなりコンポスト化(堆肥化)した
印象になります。その時点で、おがくずを全体の1/3ほど取
り出して、堆肥として菜園に入れてしまいます(きのかの家に
は一戸当たり一区画の屋上菜園が付属しているのです)。その
分、新しいおがくずを足します。数ヶ月に一度ずつ、それを繰
り返します。後は便器の清掃です。水洗でないので便器が汚れ
やすく、こまめに掃除をする必要があります。

 実際に使ってみた感想は、予想以上に快適だということです。

24時間排気をしていることもあって匂いも全くなく、虫が出
ることもなく、気持ちの良いトイレ空間になっています。生ご
みも分解してくれるので便利です。もちろん課題もかなりあり
ます。以下に整理をしてみます。

〔長所〕
 

@ 洗浄水を使わないので大幅な節水になる。

A 汚水が出ないので環境を汚染しない。

B 結果として浄水化や汚水浄化のためのエ
 ネルギーも節約になる。

C 生ごみもトイレで分解するのでごみの量
 の削減になる。

D 排水管が不要なので配置の制約がない。

E コンポストを菜園などの堆肥として使用
 できる。

F 水道の来ていない地域でも使用できる。

〔課題〕
 

@ ヒーター、モーター、ファンなどで電力をかなり使う。

A 醗酵槽が大きいのでうまく収めるのが難しい。

B 便器が汚れやすく掃除がめんどう。

C 微生物の活動を維持するため、使用が適正になるよう
 注意が必要。清掃に洗剤は使えない、抗生物質が混じ
 るのは好ましくないなど、配慮が必要。

D 定期的にコンポストを取り出し(図2)、おがくずを
 足してやるのがめんどう。

E 本下水が完備している地域では条例で「水洗トイレ」
 の使用が規定されていてコンポストトイレだけでは許

 可がおりない(我家でも別に水洗トイレを設置したが
 使用していない)。

F 価格が高い(4人槽で約100万円)


 これを読んだ方は、課題が多いのに驚かれたかもしれません。別荘ならともかく、都市部の住宅ではなかなか簡単に普及するような製品とはいえないでしょう。汚染物が外界に出ないということと、排泄物をコンポストにして野菜を作って食べるというのは、理想的な循環構造で素晴らしいのですが、電力の使用がそれを台無しにしているという感があります。災害時にも役に立たないことになってしまいます。やりやすい対策は、山と同じように電力を太陽光発電でまかなうことでしょう。攪拌は自転車のようなペダルを付けて人力でやるというのも可能ではないかと考えています。  (完)  
[08.09.28]

 

 

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